パートナーと結婚生活を送っていたら、ふとした瞬間に浮気が発覚することもあるでしょう。浮気が婚姻中に行われたものであれば、パートナーの浮気を理由に離婚が可能です。また、慰謝料も請求できるでしょう。一方で、結婚前の浮気については、それを理由に離婚をするのは難しいでしょう。
この記事では結婚前の浮気で離婚できるのか、慰謝料請求が可能なのかを解説します。
結婚前の浮気を理由に離婚は難しい
結婚後の浮気であれば、浮気を理由に離婚は可能です。しかし、結婚前の浮気を理由とした離婚は難しいでしょう。
既婚者が自分の意思で配偶者以外の異性と肉体関係を持った場合、浮気として認められます。しかし、上記が認められるのはあくまで既婚者であるという点です。そのため婚姻前の浮気では離婚の理由にはなりづらいでしょう。
パートナーが同意すれば離婚は可能
結婚前の浮気であっても離婚ができないわけではありません。パートナーが同意すれば離婚は可能です。当事者同士で養育費や慰謝料などを相談して決める協議離婚の場合、パートナーが納得すれば離婚できます。
厚生労働省が発表した『令和4年度「離婚に関する統計」の概況』によれば、令和2年に成立した離婚数は約19万3,000組です。そのうち88.3%が協議離婚で離婚しています。(※1)
(※1)厚生労働省:令和4年度「離婚に関する統計」の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/rikon22/dl/gaikyo.pdf P4,5
結婚前の浮気で慰謝料は請求できるケース
婚姻中に浮気をした場合、離婚だけでなく慰謝料の請求も可能です。一方、結婚前の浮気では慰謝料を請求するのは難しい可能性があります。しかし、結婚前の浮気であっても、次のようなケースであれば慰謝料を請求が期待できます。
- 婚約関係にあった
- 内縁関係にあった
婚約関係にあった
結婚前の浮気であっても婚約関係にあったことが明確であれば、慰謝料を請求できる可能性があります。注意すべきなのは、婚姻関係が認められるかどうかという点です。ただカップル同士で結婚後の話をしていたというケースでは、婚姻関係は認められないでしょう。
一般的に婚姻関係にあったことが認められるのは次のようなケースです。
- 婚約指輪を受け取っている
- それぞれの家族への結婚挨拶を終えている
- 結納を終えている
このように、第三者からでも婚姻関係にあったことが分かる状況であれば、結婚前の浮気で慰謝料を請求できる可能性があります。
内縁関係にあった
すでに内縁関係にあった場合、結婚前の浮気で慰謝料を請求できる可能性があります。法律上、内縁関係についての定義はありません。一般的に内縁関係は婚姻届を提出していないものの、事実上は夫婦と変わらない状態を指します。
具体的には次のようなケースであれば内縁関係が認められる可能性があるでしょう。
- 結婚式を挙げている
- 家計が一緒
- 長期間同居していて周囲も夫婦と認めている
- 周囲に夫婦と伝えている
- 契約書ほか書類などで続柄を(内縁)妻、(内縁)夫としている
このように内縁関係であることが分かれば、結婚前の浮気であっても慰謝料を請求できるケースがあります。
結婚前の浮気で慰謝料は請求できないケース
結婚前の浮気で慰謝料を請求できないケースは次のとおりです。
- 婚約・内縁関係ではない
- 浮気の原因が自分にある
- 慰謝料請求の時効が過ぎていた
- 証拠を集めていなかった
婚約や内縁関係でなかった場合だけでなく、ほかの原因でも慰謝料を請求できない可能性があるので注意しましょう。
婚約・内縁関係ではない
婚約していなかった、もしくは内縁関係になかったという場合は、結婚前の浮気で慰謝料を請求できないでしょう。また、本人は婚約をしている、内縁関係にあると思っている場合であっても、それぞれを証明できなければ慰謝料請求は困難です。
浮気の原因が自分にある
パートナーが結婚前にした浮気の原因が自分にある場合、慰謝料請求は難しいでしょう。例えば次のようなケースでは、浮気の原因が自分にあると判断されかねません。
- 浮気・不倫以前からセックスレスだった
- 家を空けることが頻繁していた
- 自分も浮気していた
- 家庭内別居の状態にあった
パートナーがこれらの原因を証明できれば、浮気の慰謝料請求ができないのが一般的です。
慰謝料請求の時効が過ぎていた
慰謝料請求には時効があるので注意しましょう。時効を過ぎていた場合、慰謝料請求は認められません。慰謝料請求の時効は浮気の事実を知り、浮気相手の存在を知ってから3年です。
相手の顔を覚える程度では「浮気相手の存在を知る」とは認められません。浮気相手の名前や住所など詳細を把握してから3年です。なお、浮気相手を特定できなかった場合であっても、浮気があってから20年が経過すると、慰謝料を請求する権利そのものがなくなってしまいます。
慰謝料請求の時効が過ぎてしまうと慰謝料請求は難しくなりますが、次のような方法で時効の中断が可能です。
- 裁判で請求
- 内容証明郵便で催告
- 債務承認をさせる
裁判で請求
慰謝料請求について裁判所に提起することで時効が猶予されます。そのため、裁判中であれば時効が完成することはありません。
裁判で請求した後に確定判決が出る、もしくは和解すると、改めて10年の時効が発生します。
内容証明郵便で催告
内容証明郵便で催告することでも慰謝料請求の時効を中断できます。内容証明郵便によって相手に慰謝料請求を求めることで、相手が郵便を受け取ってから6ヶ月は慰謝料の時効が猶予されます。
内容証明郵便で慰謝料請求の時効が猶予されるのは1回のみです。内容証明郵便による催告で慰謝料請求がまとまらないのであれば、6ヶ月以内に裁判所に提起が必要です。
なお、催告を普通郵便で送るのは避けましょう。内容証明郵便であれば、郵便局が誰から誰にどのような文書が送られたかを証明してくれます。
債務承認をさせる
債務承認とは、相手に慰謝料請求を認めさせることを意味します。パートナーが慰謝料請求を認めることで時効が3年猶予されます。パートナーが慰謝料請求を認めた日からカウントがスタートします。
なお、債務承認で注意すべきなのが水掛け論になる可能性があるという点です。口頭での債務承認も可能ですが、のちのち、言った言わないに発展しかねません。そのため、債務承認をさせる際は書面に残しましょう。
証拠を集めていなかった
結婚前のパートナーの浮気で慰謝料を請求する際は、証拠を集めておきましょう。
結婚前の浮気の証拠は、パートナーがほかの異性と肉体関係にあったことだけではありません。パートナーが浮気をしていた際に婚姻関係にあったことを証明する証拠が必要です。
パートナーが他の異性と肉体関係にあったこと、パートナーと婚姻関係にあったことの2つを証明できなければ、結婚前の浮気で慰謝料を請求できないでしょう。
結婚前の浮気であっても証拠集めが大切
先述のように結婚前の浮気であっても、パートナーがほかの異性と肉体関係にあったことを示す証拠が必要です。
ほかの異性と肉体関係にあったことを示す証拠の例は次のとおりです。
- 肉体関係を認めた音声や書面
- 肉体関係があったことが分かるメッセージ
- ラブホテルに出入りする写真
- カードの明細やラブホテルの明細
肉体関係を認めた音声や書面
パートナーが肉体関係を認めた音声や書面は、浮気の証拠として機能します。パートナーに浮気について問い詰めたことで、相手が肉体関係を認める可能性があるでしょう。相手が肉体関係を認めた音声や書面は、当事者だけが分かるようでは証拠として機能しません。
裁判によって慰謝料を請求をするのであれば、第三者であっても肉体関係を認められるようにしておきましょう。
なお、パートナーに他の異性との肉体関係を問い詰める際は確信があるときにしましょう。肉体関係がないにも関わらず問い詰めてしまうと、反対に相手から不信感を抱かれる原因になってしまいます。
浮気をされたからといって無理に認めさせるのは注意
浮気をされたからといって、無理に相手に肉体関係を認めさせるのは注意が必要です。無理に浮気を認める書類を記載させると、証拠として認められない可能性があります。
それどころか、脅迫などによって無理に書類を書かせると強要罪に問われかねません。
肉体関係があったことが分かるメッセージ
肉体関係があったことが分かるメッセージを目にしたら、自分のスマートフォンで撮影しておきましょう。肉体関係があったことが分かるメッセージであれば、慰謝料請求の証拠として機能します。
なお、慰謝料請求の証拠になり得るメッセージを探そうとするあまり、パートナーのメールやSNSの中身を見るのはリスクが高い行為です。
パートナーがアクセス制限をかけているアプリやスマートフォンを無断で解除すると、不正アクセス禁止法違反に問われかねません。(※2)
(※2)警視庁:不正アクセス行為の禁止等に関する法律の解説
メッセージは前後も証拠として収集しておく
肉体関係があったことが分かるメッセージは、前後も証拠として収集しておきましょう。
メッセージ一通だけを切り取っても、肉体関係を判断できない可能性があります。例えば「昨日は良かったね」というメッセージだけでは、肉体関係があったかどうかを判断できません。そのため、前後のメッセージも収集しておくことが大切です。
ラブホテルに出入りする写真
パートナーが浮気相手とラブホテルに出入りする写真も、慰謝料請求の証拠として機能します。
パートナーが浮気相手と食事している場面や、ショッピングしている場面などをカメラで捉えても浮気の証拠としては機能しません。あくまで肉体関係があったかどうかが、慰謝料請求のポイントです。
しかし、ホテルであればどこでもいいわけではありません。シティホテルやビジネスホテルにパートナーと入室する場面では、友人と休憩していたという言い訳が通る可能性があります。一方、ラブホテルの場合、友人との休憩という言い訳は通用しづらいでしょう。
写真はデジタルではなくフィルムが有効
パートナーが浮気相手とラブホテルに入室する際の写真は、デジタルではなくフィルムが有効です。
手軽さから、ついスマートフォンで撮影したくなるかもしれません。しかし、デジタルデータは捏造の可能性が疑われるため、証拠としての効力は弱まってしまいます。そのため、デジタルではなくフィルムで撮影しましょう。
証拠写真の効力をより高めるためには、メモも取っておくことが大切です。撮影日付や撮影時に状況をメモしておくことで、証拠としての機能を高められます。
自分で尾行すると気付かれる恐れがある
パートナーが浮気相手とラブホテルに入室している様子を写真で撮影するには、相手を尾行する必要があります。しかし自分で尾行をすると、相手に気付かれる恐れがあるので注意しましょう。相手に気付かれてしまうと証拠隠滅や浮気関係の解消などにつながり、慰謝料を請求できなくなります。
自分で尾行するリスクは証拠がなくなるだけではありません。パートナーや浮気相手に気付かれてしまうと、ストーカー規制法に抵触する可能性があります。(※3)
(※3)警視庁:ストーカー規制法が改正されました!
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/stalker/R03kaisei/index.html
カードの明細やラブホテルの明細
クレジットカードの明細やラブホテルの明細も、パートナーが浮気したことを示す証拠として機能する可能性があります。この際に注意すべきなのがクレジットカードの明細、ラブホテルの明細などひとつだけでは効果が期待できないという点です。ひとつだけでは肉体関係を示す直接的な証拠にはなり得ません。しかし、ひとつではなく複数の証拠を繋ぎ合わせることで、効力を高められます。
カードの明細やラブホテルの明細などを自分で探す際は、パートナーに気付かれないようにしましょう。パートナーに気付かれてしまうと証拠隠滅につながりかねません。
結婚前の浮気で慰謝料請求するなら証拠集めを進めよう
結婚前にパートナーが浮気をした場合、相手が納得すれば離婚は可能です。また、婚約しているもしくは内縁関係にあったのであれば、慰謝料の請求も可能です。
慰謝料請求するには、婚姻関係にあったことや内縁関係にあったことを証明する必要があります。さらに結婚前に浮気したことを示す証拠も集めておきましょう。
結婚前の浮気を証明するためには、パートナーと浮気相手の肉体関係を示す必要があります。例えば2人がラブホテルに入室している場所を撮影するのが効果的です。
浮気の証拠集めは自分で進めるのではなく、探偵に依頼するのがおすすめです。アイヴィ・サービスでは浮気の証拠集めに対応しています。パートナーの浮気で悩んでいる方はぜひご相談ください。